
町田 不動産の珍しい効果
2000年に中間報告が出された時にも、魚類に影響が出そうだという前半部だけを報じて、浦乳類には影響なさそうだという後半部を省略した新聞もありました。
新聞やテレビを見ている人たちからすれば、前に騒ぎになった環境ホルモンの話はいつの間にか消えてしまい、結局どうだったのかはわからないという状況が続いています。
もちろん、「危なそうな」物質に、絶対に哨乳類に対する影響がないとは言い切れません。
これ以外にも無数といえるほどの物質が環境中に放出されているわけで、危ない物質が絶対にないとも言えません。
それでも、プラスチック製の食器や浦乳瓶をわざわざ廃棄する必要はないでしょう。
どうせ怖がるなら、環境ホルモンよりも明らかに怖いものがあります。
たとえばタバコの煙ですが、これについては後でお話しします。
「奪われし未来」では、イギリスのエア川にすむコイ科のローチという魚の精巣の中に卵子が観察されるという、「メス化」の現象が記述されています。
下水処理場からの排出水に含まれているノニルフェノールが原因であり、環境ホルモンの証拠のひとつと考えられていました。
しかし、研究が進むにつれて、ローチのメス化の主原因は、人間の尿に含まれている女性ホルモンや経口避妊薬であることがわかってきました。
それらが下水道を通って川の魚をメス化させているらしいのです(9)。
動物に性転換が起きるというと、大変な話であるように聞こえます。
人間の性は精子にある遺伝子で決定され、死ぬまで変わらないので、他の動物もそうだと思い込みがちだからです。
けれども動物界では、性は必ずしも死ぬまで変わらないというものではありません。
魚は良い例で、周りに同性のライバルがいるかいないかというようなことで、オスからメスへ、メスからオスヘと性転換する種がいます。
「EXTEND2005」は「内分泌かく乱作用に関する情報が持つと考えられる特徴」を、次のようにまとめています。
仮説が根拠となり懸念を生んでいる場合が見受けられる。
専門家に広く受け入れられるに至っていない研究成果の一部があたかも仮説を証明する根拠のごとく扱われることがある。
仮説に対し明確に支持する結論も、積極的に否定する明確な結論も得られていない。
相反する結論がある場合、「相反する結論があること」自体も伝わっていない場合があり、特に仮説を否定する研究結果については情報が伝わりにくい。
社会的問題となったことから漠然とした不安がもたれている場合が多く、漠然とした不安そのものが増大、維持されている。
生態系を構成する生物種やヒトに関する生理学的調整の仕組みについて未解明な点が多いことが知られていない。
メカニズムそのものおよび化学物質との関連についても未だ不明な点が多いことが理解されていない。
専門家がきちんと受け入れるまでには至っていない仮説が、「漠然とした不安」の中で一人歩きすることがあるということです。
環境ホルモンだけでなく、環境や健康の問2006年6月にNが「T」という番組を放映しました。
「最近、耳にしなくなったのだけれど、どうしたのだろう」という趣旨で、番組の概要はNのホームページからも見ることができます。
番組の前半部では、先ほどのエア川のローチの「異変」の原因が、ノニルフェノールにあると紹介されていました。
そして後半部では、ヒトの精子数を日本、デンマーク、フランス、イギリス、フインランドの5ヵ国で比較してみたら、日本人が最少であり、最多のフィンランド人より約題全般にあてはまります。
落ち着いて考えてみると、環境ホルモンについては、そもそも何が起こっているかという結果がわかっていないのです。
この問題を昔の公害にたとえる人もいますが、あの時はイタィィタィ病、水俣病、四日市瑞息というあきらかな公害病(結果)が発生し、その原因が何なのかが問題になりました。
タバコの害も、それによって病気が増えるという結果があきらかだからこそ、どうするかが問題になっているのです。
環境ホルモンとは問題の性格が違います。
元の文献をあたってみると、実際に測定された精子数は日本人が最も多く、フィンランド人より2割も多いのです。
けれども、日本人は禁欲期間が長く精子が濃くなっているということで、その分が補正されて(少なくされて)います。
番組で紹介されたのは、実測値ではなく補正値だったのです。
補正値を紹介すること自体に何の問題もありませんが、それが実測値より小きい値であるとは一切言われていませんでした。
かりに日本人男性の精子が欧米人より本当に少ないとしても、それが環境ホルモンによるものと断定することはできません。
元の文献でも番組の中でもホームページでも言われているとおり、民族的な違いや食生活、文化などの影響は無視できないでしょう。
むしろ、そちらの違いから考えてみるべきです。
そもそも、日本人が欧米人より環境ホルモンを多く摂取しているというデータはどこにもないのですが、環境ホルモンをテーマにした番組の中で精子が少ないと言われたら視聴者はどう思うでしょうか。
多くの人は、日本が欧米より汚染されているのではないかと、なんとなく思っているす。
風呂場は路上より危険である何がどれだけ危険かを測るものさしに、「リスク」があります。
よくないことが起きる確率のことです。
人間にとって最悪の事態は死ぬことなので、ある出来事やモノによって人が死亡する確率をくらべてみましょう。
通常、1年間に8万人のうち何人がそれによって死亡するかという数字で表し、これを年間死亡リスクと言います。
まずは、交通事故について。
最近の死者数は減少傾向にあり、2005年は6871人でした。
日本の総人口は約1億2800万人ですから、2005年の交通事故による年間死亡リスクは6871/1億2800万で、およそ2万分の5になります。
ただし、警察庁の統計で交通事故死としてカウントされるのは、事故後別時間以内の死亡に限られます。
事故後別日以内に亡くなったのは7931人で、総人口で割ると3万分の6ですから、環境ホルモンの番組の中で関係はわかっていないと何度言われても、「危ないのかなあ」と思ってしまうでしょう。
そう思うなという方が無理です。
こうして「漠然とした不安」が、また広がっていくのです。
意外に多いのが入浴時の死亡事故で、風呂場や脱衣場で年に1万4000人が亡くなっていると推計きれています。
年間死亡リスクは3万分の4を超え、交通事故より大きい。
つまり、お風呂場は道路よりリスクが大きいというわけです。
風呂場での死亡原因には心筋梗塞や脳卒中が多く、亡くなるのは高齢者が中心です。
つまり高齢者だけの集団でみれば、死亡リスクはもっとずっと高くなる。
季節的には冬が多いようです。
暖房の効いた居間から寒い脱衣場に行って、服を脱いで「おお寒い!」と熱いお湯に飛び込む。
この時の急激な温度変化に、高齢者の身体はなかなかついていけません。
ですからお年寄りのいる家庭では、冬には脱衣場や浴室を暖めておいたり、お年寄りは一番風呂を避けたりといった生活の知恵が必要です。
これでかなりのリスクを減らすことができます。
若い人でも、深酒したあとのお風呂はリスクが高いそうですから、油断してはいけません。
次は火事です。
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